「聴く」力を育てる聴覚トレーニング トマティスメソッド
聴覚をトレーニングするということ
「きく」という行為には「聞く」と「聴く」の二通りがあります。
例えば学校で、先生の話が“聞こえている”だけの状態の子どもたちがいる一方で、一生懸命“聴き取ろうとしている”子どもたちもいます。この二様の状態が「聞く」と「聴く」の違いで、英語でも「hear」と「listen to」で区別しています。
視 覚においても、単に「見えている(see)」ということと、しっかり「見る(look at)」ということが違うように、「聴く(listen to)」や「見る(look at)」には「聞こえている(hear)」や「見えている(see)」 の状態にはない、見よう、聴こうという意思・意欲が入っており、このとき、目であれば文様筋が、耳であれば中耳の部分にある小さな筋肉(アブミ骨筋など) が作動しているのです。人は、見たい物があれば目の焦点を合わせるように、コミュニケーションをしたいという意欲があれば、自然に耳を傾け、メッセージを 正しくとらえようとします。
そしてその時、耳の中では、鼓膜、中耳、内耳が以下のような役割分担をしています。
1 鼓膜 音のレンズ 音を捉える 2 中耳 音の調整 鼓膜張筋とアブミ骨筋が調整しあって耳小骨を動かし聴き取りに必要な周波数帯にフォーカスする。 3 内耳 音声スペクトル 周波数毎に音を分析し、聴覚野に音の情報を電気的信号に変えて送る。 このように「聴く」ということは耳のそれぞれのパーツがきちんと働いて、体の中に音を取り込むということなのです。
トマティスメソッドの聴覚トレーニングは、高周波帯の音や骨導を通しての音など、様々な音で耳の中にある小さな筋肉や聴覚器官を刺激することによって耳の機能を調整し、「聴く」能力をアップさせます。
トマティスの基本三法則
- 耳で聴き取れない音は発音できない。
- 聴覚の改善により発声にも変化が現れる。
- 聴覚の改善後、発声の改善も定着させる事ができる。
第1法則
「人 間の声には耳で聞いたものしか含まれない」というフランス人耳鼻咽喉科医アルフレッド・トマティスが唱えた学説は、音声心理学者Raoul Hussonによってソルボンヌ大学心理学実験室で確認され、1957年3月にフランス科学アカデミーで「トマティス効果」として、同年6月にパリ国立医 学アカデミーで「聴覚を起源とする発声の変化と生理学的臨床的適用例」として報告されています。
第2法則
「耳 で聞いた音しか発声できない」とする第1法則の確認の後、「損なわれていた周波数を正しく聞き取れるようになると、その周波数は、発声の際に瞬間的、無意 識的に再生される」という第2法則が導かれました。Hussonは1957年6月のパリ国立医学アカデミーの報告の中で、この第2法則を「トマティス効果 の生理学的、生理病理学的帰結」としています。
第3法則
「残留の法則」とされるこの第3法則は、「聴覚刺激をある一定の期間与えると、残留現象により被験者の自己聴取の姿勢が変わり、結果的に発声が変わる」。ということを伝えています。
耳は、中耳の鼓膜張筋とアブミ骨筋を使って音の強さを調節し、聴覚に連動して第7神経系統がアブミ骨筋とともに、唇の周囲の口輪筋や前方開口の2表情筋を 制御し、第5神経系統が鼓膜張筋とともに、口を横に引っ張る咬筋を制限して発声に影響を与えています。◆トマティス博士はこれらの法則を機軸に、聴き取りの状態をみる独自の“リスニングチェック”方法とトレーニング機器を完成させて、トマティス聴覚改善トレーニング手法を確立しました。
OE装置
アルフレッド・トマティス博士
アルフレッド・トマティス博士
1920年フランスのニースに生れる。
パリ大学医学部耳鼻咽喉科卒業。
聴覚、心理学、音声学を専門とする。
1947年に聴覚と発声の相関関係を明らかにした理論を確立。
1957年、この理論はトマティス効果としてフランス科学アカデミーおよびパリの医学アカデミーに登録され、聴覚およびコミュニケーション障害のリハビリ技術の基礎となった。
フランス労働省、海軍工廠省などに勤務の他、パリ人類学学院、パリ臨床心理学院、英国系大学にて教鞭を取る。
2001年 12月 没


<研究事例>